ふりかえりコラム

当事者意識で考えることの落とし穴

「もっと当事者意識を持て!」
なんて言葉を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。

目の前にある課題の解決を、誰かに頼ろうとするのではなく、自分事として考えて解決しようとすること。これは日々仕事をする上でとても大事なことだと思います。

ただ、仕事をする上でもう1つ大事なことは何かと言えば、それは「成果を出す」こと。
つまり、当事者意識を持って仕事に取り組み成果を出す。
これが一番理想的なのかも知れません。

ただ、このやり方ってどんな状況でも理想的だとは思わないんですよね。
特に今私たちが置かれているような「答えが分かりにくい状況」においては。

当事者意識では見えないもの

そもそも、なぜ当事者意識が大切だと言われるのか?
多分それは、当事者意識が強いほど課題の解決に真剣になるからでしょう。

でも、この当事者意識ってデメリットもあると思うのです。
それが「課題に近づきすぎて、課題を客観視できなくなる」こと。

私たちが普段、目の当たりにする仕事の多くは、本業の中における課題の解決。
これは当事者意識でも問題ないでしょう。
なぜなら、これまでの経験が役に立つから。

ただ、私たちが今置かれているような、先が見えない状況の中で自分たちがどこへ進むべきなのか?と言った経験のない課題を判断しなければいけない時。
そんな時に大切なのは、当事者という「主観」ではなく、自分すら他人として考える「客観」なのではないでしょうか?

平常時は世の中が大きく変化することはありません。
一方、現在は未知のウイルスに対応するためにどのお店や会社も試行錯誤を続けている状況。こんな時、私たちのこれまでの経験というのは役に立ちづらく、それよりも大切なのは、世の中の大きな流れを客観的に眺め、その中で自らが進むべき道を考えることなのだと思います。

もちろん、当事者意識を否定するつもりはありません。
大事なのは、当事者意識である「主観」と、俯瞰視点の「客観」を状況に応じて使い分けること。

「客観」では状況の判断は出来ても、具体的な課題の解決は進みません。
だから、課題は「客観」で考えて、実行は「主観」で動く。

言葉で言うほど簡単ではありませんが、こういう状況の時ほど、この2つの視点を意識して使い分けることが非常時を乗り切るためには必要なのだと思うのです。

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