開業前

「顧客のターゲティング」に効果はあるのか?

1号店を開業する4ヶ月くらい前のこと。
第二弾となる事業計画書を作っていた私は無性に興奮していました。

興奮していたその訳は、「開業して成功するための秘訣」を習得した気がしたから。
有名なマーケッターの方が書いた本の内容と、私たち1号店の営業戦略が見事に合致していた為、「私たちの戦略に間違いはない」と確信が持てたのです。

そのマーケッターの方の本にはこんな事が書いてありました。

「お客さんにたくさん来てほしいからと言って、全員を取り込もうとしてはいけない」
「これからの時代は顧客を絞り込むことこそ、成功の秘訣」
「顧客を絞り込めば絞り込むほど、そのターゲットに強く響く」
「広く浅く」受けるお店づくりではなく、「狭く深く」受けるお店づくりこそが成功の秘訣なのだ、とその方は説いていました。

そして、私たちの事業計画書の営業戦略にはこんな文字が。
2002年6月に作成した事業計画書の中の1ページ。
必要以外の箇所はグレーにしています。

マーケッターの方の言葉と、私たちの戦略の一致に大きな自信を持ったのです。

顧客は「ターゲット」になんかされたくない

私は元々、人材業界の出身。
前職で企画に関わるような仕事もしていて、そこそこ実績も残してきていた私は、この計画書で戦略を練っていた時に完全な自己満足に陥っていることに気づきませんでした。

「ターゲット」なんていう、それらしい言葉を使って計画書を作れば、その通りに売上が上がると勝手に思い込んでいたのです。

完全な「甘ちゃん」の考えでした(笑)。

元々、大学生をターゲットなんて書いたのも、たまたま1号店の近くに大学が3つあったから。冷静に考えれば、対象となる人は20〜24歳くらいの人だけ。
さらにその中でお酒に強い興味がある人の数なんて、たかが知れています。

そんな客観的な視点も持てず、事業計画を作ってそのまま開業してしまったために、開業後の告知活動で大きな失敗をしてしまいました。
開業直後は、各大学の前で「だけ」、告知活動をしたのです。

結果は散々でした。
創業メンバー4人で、毎日お昼くらいから各大学の入口の前に立って、チラシを撒くも悲しくなるほど反応なし。

それもそのはず。
私が勝手に「ターゲット」と決めただけであって、学生たちからしたら聞いたこともない、ただの駅から遠くの飲み屋でしかない訳です。

勝手に「ターゲット」なんかにされて、迷惑なだけだったでしょう。
ターゲティングをしたことが完全に裏目に出てしまいました。

稚拙なターゲティングは百害あって一利なし

その後、悪戦苦闘の日々が続きながらも、私たちの1号店は年齢を問わず、多くの方に使ってもらえるお店になりました。

あくまで感覚値ですが、結局ご来店いただいていたお客さまの中で大学生は1割くらい。
ターゲティングを盲信していたら、間違いなく閉店となっていたでしょう。

この1号店の体験以降、私たちは顧客を絞り込む「ターゲティング」をいうことを一切しなくなりました。「良いお店づくりができれば、顧客は絞り込まなくても自然と共感してくれる層の方たちが来てくれる」と考えるようになったからです。

当時の私の失敗を振り返ってみると、1番の失敗は「ターゲットは私が決めるもの」と勘違いしてしまった事だと思います。
浅はかな知識を持って開業してしまったばかりに、ずいぶん遠回りをしてしまいました。

百害あって一利なし、まさにそんな感じでした。

今なら本来の意味でのターゲティングが理解できているような気がしますが、巷の本に書かれているほど、ターゲティングとは単純なものじゃないような気がしています。

マーケティングのプロが開業するのであればターゲティングとは有効な手段かも知れませんが、生半可な知識でターゲティングをしてしまうと、当時の私のように自分で自分のお店の売上を下げることになりかねません。

もし、これから飲食店の開業を考えている方で、ターゲットを絞り込もうと考えている方がいたら、まずはターゲティングなどは置いといて、「良いお店づくり」に集中することをオススメします。

以上、私が創業時に失敗したターゲティングの話でした。
読んでいただいてありがとうございます。
当時、私たちが必死でチラシ配りをした大学前。
あまりに結果が出なすぎて、今でも前を通ると当時のつらい思い出が蘇ります(笑)。
※写真はGoogleMapより

-開業前

© 2024 辻本誠事務所