開業前 開業後

「お金がない」を武器にした店作り

2002年の10月中旬。1号店の開業まで1週間を切っていた頃。
これまで書いてきた通りトラブル続きでしたが、何とかお店は形になってきていました。

1階はカウンター席&厨房。
2階はテーブル席という作り。

ただ、2階建ての店舗がほぼ完成した段階で致命的な問題がある事に気づきました。

「どうやって2階のオーダーを1階に伝えるのか?」
「どうやって1階で作った商品を2階に運ぶのか?」
という飲食経験者であれば超・初歩的な問題。

私たち、飲食未経験だったんでオープン直前まで気が付かなかったんですね〜。
当然、お金がないのでオーダーを通す高価なハンディ端末なんて買えません。
さらに商品を2階へ運ぶエレベーターなんてもってのほか。

オープンまでは1週間足らず。
資金もほとんど使い果たし、万事休す。

そこで、お金がないことを武器にすべく、超アナログのオーダーシステムを作り出すことにしたのです。

「お金がない」をわくわく体験へ

業者に開業資金を騙し取られたり、かなりグレーなルートで中古の厨房機器を調達したり。開業の準備段階から想定外の連続だったので、オープン直前のこの頃には多少の事ではへこたれなくなってました(笑)。

「どうせお金がないなら、それを逆手に取って武器にしよう」
「めちゃめちゃダサいオーダーシステムならお客さんも笑ってくれるだろう」

ほとんど開き直った状況で考えて決まったオーダーシステムがこちら↓

このガチャガチャの中にオーダーを書いた紙を入れて、一階に渡すのです。
その渡す方法がこちら。
写真左下の赤線で囲ったところが2階部分のガチャガチャ投入口。
塩ビの配管むき出し(笑)。

完成間近の2階の床をくり抜いて、1階のカウンター席の横に配管を通しました。

2階でオーダーをカプセルに入れて、配管に投入すると、1階カウンター席の横にオーダーが落ちてくるという訳です。

ズバリ予算、3000円くらい。
いや〜、今見てもダサいですね(笑)。

でも、このオーダーシステム。
狙い通り、お客さまには大好評。

あまりにダサすぎて、ほとんどのお客さまが笑ってくれました。

さらにこの「ガチャガチャ」という男子ならワクワク必至のアイテム。
自分でオーダーしてみたいというお客さまも結構いらっしゃって、気がつけばセルフオーダーシステムに進化してました(笑)。

「井戸」という、もう1つのワクワクアイテム

そして、もう1つの問題。
「どうやって1階の商品を2階に持っていくのか?」

これも思い切って、1階厨房の天井部分に大きな穴を開けて井戸作りました。
写真が残ってないのでイメージですが、こんな感じ。
1階で商品ができる度に井戸の桶のようなものに入れて、2階で井戸を引き上げて商品を取り出すのです。

こちらも超アナログな仕組みで大好評。
一部のお客さまは斬新すぎてちょっと引いてましたが。。

開き直って考えた低コストのアイデアで、2つの課題をクリアすることができました。

マイナス要素をプラス要素に

結果的に1号店が軌道に乗るまでは1年半ほどかかったので、この2つのアイテムが成功の要素にならなかったのは事実。

ただ、多くのお客さまが私たちの低コストのアイデアを面白がって、応援してくれました。

「お金がない」というのは、開業するには不利な要素だと思います。
でも、その不利な状況をいかに武器にして集客できるかを考えてみると、面白いアイデアが結構でてきたりします。

高価なハンディ端末や、商品運搬エレベーター。
そんな大手チェーンには当たり前の設備に、低コスト&手作りのアナログの武器で戦う。

マイナスの要素からプラスの要素を生み出して勝負する。
これも、飲食店を開業する時の面白みの1つなんじゃないかと思います。

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