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友人と起業するということは、友人を止めること

以前、このサイトのどこかにも書きましたが、私たちの会社は4人で創業しました。
4人は小・中学校の同級生で、20歳くらいの頃から起業するまでの約6年は進む道も別々にはなりましたが、時折4人で集まっては近況を報告し合うような友人でした。

別に昔話をしたい訳じゃありません(笑)。

ただ、私たちと同じように「友人と一緒に起業をしたい」という相談も最近よく受けるようになってきたので、友人と起業するとどんな事が起きるのかについて、ちょっと書いておこうと思ったのです。

前職の会社も友人同士の起業だった

「友人と起業してうまくいくのかどうか?」
この心配をする人はとても多いと思いますし、実際に私たちが起業する前も全く同じことを考えていました。

偶然ですが、私が前職で働いていた会社の役員さんたちも友人同士での起業だったため、友人との起業を間近で体験しながら仕事ができたのは、とても恵まれた環境だったかも知れません。

ただ、前職の役員さんたちを見ていて不思議に感じていたことがありました。

それが「全然友人同士とは思えない」という事。

言葉遣いもお互い敬語で話をしているし、時にはピリピリムードになっているのを目にしたり。。友人同士のはずなのに、なんでだろう?

結局、さすがに役員さんにそんな質問をする訳にもいかなかったので、謎を残したまま起業をすることになった訳ですが、いざ自分が起業してみたらビックリすることが起きました。

友人ではなくなっていく一方で...

私が実際に起業して数年経ってビックリしたこと。

それは、前職の役員さん達と同じように、友人だったはずの創業メンバーがいつの間にか友人とは思えなくなってしまっていたのです。

気がつけば、学生時代はお互い名前を呼び捨てで呼び合っていた仲だったのが、お互い「さん」付けで呼ぶ機会が多くなっていました。また、俗にいう「タメ語」だった会話も、いつの間にか「丁寧語」に変わっていました。

友人が友人とは思えなくなる理由。
これは恐らく、それぞれが利益を出す責任が発生するからじゃないかと思います。

友人関係には責任なんてありません。
でも、共に会社を始めたら、それぞれが利益を出す責任があります。

正解かどうかは分かりませんが、友人と会社を始めると、会話のほとんどがそれぞれの責任に踏み込む話になるため、結果的に、呼び方や言葉遣いも一定の距離を置いて話をした方が話しやすいという事なのかも知れません。

では、友人じゃなくなる事が悪いことなのかと言うと、そうも思いません。

友人とは思えなくはなりましたが、これほど「信頼できるパートナー」と思える人間は、他に探しても見つからないでしょう。友人と共に起業し、相手が友人と思えなくなるということは、もう一歩先の信頼関係へ進んだと考えられる訳です。

友人と起業する一番のデメリットは?

話をちょっと戻して、「友人と起業してうまくいくのかどうか?」という話。
正直、私たちも1度しか起業をしていないので、正確なことは分かりません。

ただ、恐らく「友人と起業すること」と「うまくいくのかどうか?」という事は関係がないような気がします。

私たちも起業する前は「友達同士で起業なんかしたってうまくいく訳がない!」とよく怒られてましたからね(笑)。それよりも、友人同士で起業して分かったのは、会社がうまく成長していかなかったら「友人」という関係も終わってしまうという事。

会社がうまくいかなければ、それぞれ別々の道に進んでいくしかありません。
先程、共に起業するという事は友人という関係よりも一歩先の信頼関係へ進むこと、と書きましたが、失敗したから友人に戻るという事は、現実的には難しいでしょう。

つまり、友人と起業するという事は、もう「友人には戻れない」と言う事。
そしてこれが、私の考える友人と起業する一番のデメリットなのです。

私たちも友人同士で起業したので、もちろん友人同士の起業は否定しません。
ただ「友人と起業したら、友人を止めることになった」という私たちの経験も、ぜひ頭に入れてもらった上で創業メンバー選びを検討してみていただければと思います。


10年ほど前、創業の地1号店が老朽化のため解体となる最終日に店舗で撮った1枚。
友人という関係ではなくなりましたが、信頼できるパートナーです。

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