「せっかくお店を開業するなら、スタッフがイキイキ仕事に取り組める風土にしたい。」
これは、開業する前に私が考えていた理想的な将来の社風。

これから開業を考えている方の中には、当時の私と同じ考えの方もいらっしゃると思います。

じゃあ、イキイキ仕事に取り組むってどういう事なのか?
この疑問に対する、当時の私なりの考えが「自由な社風」の実現。

誰に管理されなくても、スタッフそれぞれが自分のお店の経営に関われる風土。
会社によるマニュアルをなくして、自分たちの理想を追求できる社風。

でもこれ、言うのは簡単なんですが、実際にやってみるのはなかなか勇気がいるもの。
だって、赤字になったらどうするんだっていう心配がありますからね。

そんな訳もあって、会社が成長期に入ってからは自由な社風の導入を躊躇していた訳なんですが、創業から10年経った2013年、ついに自由な社風の導入に踏み切ってみたのです。

後ろ向きな導入理由

自由な社風の導入。
この言葉だけを聞くと、前向きな印象かも知れませんが、実際の導入に至った理由はちょっと後ろ向き。

その理由とは「もっと自由にやらせて欲しい」という声が社内で増えてきたから。

1号店を開業した頃はマニュアルもなく自由な社風だったはずが、社員の増加に伴いマニュアルも増加。気がつけば、社員数は60名くらい、お店は20店舗になっていました。

そんな後ろ向きな導入理由ではあったものの、せっかく自由な社風にするなら大幅な権限移譲の方が社員もやりがいを感じられると思い、こんな感じの自由を導入してみたのです。

・店舗の商品、内装、コンセプトを店舗のメンバーが決定。
・店舗の改善に必要な費用は会社が用意。
・店舗の売上予算を超えた利益は店舗のメンバーの報酬とする。
・出勤日や出勤時間も労働基準の範囲内で店舗内で自由に決める。
・全店舗の取り組みが共有できるシステムの導入。

どうでしょう?
今から振り返ってもなかなか大胆なチャレンジだったと思います。

そして、この取り組みは会社の新たな飛躍のきっかけになると考えていたのです。


実際の店舗ミーティングの風景。
スタッフ全員が経営に関われる自由な社風でした。

待っていた厳しい現実

自由な社風を導入してみた結果、何が起きたのか?
結果はこちら。

売上は創業以来、初の減収。利益は前年比85%減。出店数ゼロ。

このサイトで創業期の苦労話は結構書いてきましたが、この2013年は創業期を抜けた後の中では最大の危機だったと思います。

当然ですが、これは社員が悪いという訳ではありません。

何が悪かったのか?
それは、自由に決定できる領域を広くしすぎたこと。
各店舗が個別で決定する案件が増えすぎ、かえって深く考えたアイデアが出てこなくなってしまったのです。

結果、お店に対する投資が回収に繋がらず業績が悪化。
完全に私の方針変更ミスでした。

自由の幅

自由な社風の導入。

2013年当時、私は自由の権限は大きければ大きいほど良いと思っていました。
でも間違っていました。

突然、お店の経営のほとんどが自由と言われて、社員は困っていたと思います。
変える必要のない所も「何かを変えなければいけない」という感覚になってしまい、低迷するお店が多発してしまいました。

自由が欲しいという感覚。
これは、私の会社の社員だけでなく、多くの会社員が求めるものだと思います。
ただ、人それぞれが求める「自由」には、その幅があり、そして種類も違うのでしょう。

それを考えることなく、いきなり大きな自由を任せること。
そして、社員もそれを望んでいるはずと勝手に決めつけてしまったこと。

これは、言ってみれば単なる「私のエゴ」。

自由な社風とは、非常に細かく計算し尽くした、その会社なりの「不自由のルール」があってこそ成り立つ社風。
それを考えずに自由という名のもとに全部を社員に任せてしまうのは、会社の経営自体を放棄しているのも同然ということなのだと思います。

以上、私の体験が今後店舗展開を考えられている方の参考になれば嬉しいです。


2013年頃の全体会議の一コマ。
この時はまだ、この先に待つ厳しい現実に気づいていませんでした。