私が飲食業未経験でバーを開業したのは、このサイトでも散々書いてきました。
競争の激しい業界のため、当然苦労の方が圧倒的に多かった訳ですが、今から振り返って考えてみると、こうも思うのです。

「飲食経験がなかったから逆に新しい発想ができた」と。

なぜ改めてこんな話をしているのかと言うと、さっき業界の常識を知らない人間ならではの写真を偶然見つけたから。さて、皆さんはこの写真のどこに未経験ならではの発想が入っているのか、分かりますか?

未経験ならではの非常識な投資感覚

上に挙げた写真、これは私が2003年に出店した2号店の写真。
これのどこに未経験ならではの発想が入っているのか?

「バーなのに真っ白な壁?」
「消費意欲を弱くする色使い?」
「少なすぎるテーブル席?」

まぁ、確かにどれもハズレではないかも知れません。
それほどシロウト感満載のお店と言えばその通り、笑。

ただ、今の私から見て未経験ならではの発想を一番象徴していると言えるのが、写真の中央にある石造りのエントランス。

このエントランスのどこが未経験ならではなのか?
それは、このエントランスを造るためにかけたコスト。

実はこの2号店の出店にかかった費用のうちの25%が、このエントランスを造るためのコストなのです。

要らないものにお金をかける効果

飲食店を出店するためには、そもそもどれくらいのコストがかかるのか?
ここでは敢えて金額を書きませんが、その25%と言えば、それがどれくらい大きな金額かは予想ができるのではないかと思います。

しかも、乱暴な言い方をしてしまえば、お店のエントランスなんてドアさえ付いていれば事足りる訳で、そこに大きな投資をするなんて事は、飲食業の常識から考えれば非効率極まりないのです。

でも今、改めてこのエントランスを見てみると思うのです。
この非効率な投資感覚こそが「他との違い」を生み出している要因であり、これは業界で長く働いてきた人には出てこない発想だと。

業界に長くいればいるほど、お店のどこに投資をすれば売上に直結しやすいのかが分かるようになっていきます。ただこれは逆を返すと、他のお店と同じになっていくこと、業界の常識に近づいていくことと言える訳です。

「売上に直結しないものに投資をする感覚」

私は今でも飲食業界は全体的にこの感覚が弱いと感じています。
そして、これからの時代は今まで以上に、お店の「本当の商品」の価値が問われる時代になると思っていて、それは何も食事や飲み物だけが商品とは限らず、一見不要に思えるものに投資をすることがお店での時間の価値を高めることにも繋がるのだと思うのです。

お店にとって本当に必要なものは何なのか?
これを見極める力は、業界経験の長さから生まれる理屈より、むしろ業界の人からしたら常識を知らない非常識な人の感性にこそ、そのヒントがあるのではないか。

私がこの業界で運良く生き残ってこれたのは、このエントランスへの投資に象徴されるように、あまりに飲食業界に対して非常識だったから。業界で生き残るために必要なのは、常識的な視点ではなく非常識な視点であるということ。

改めて2号店のエントランスを見てみると、そんな事を思わずにはいられないのです。
決して過去の自分の投資を正当化しようとしている訳ではないのです。。笑。