「バーをもっと多くの方たちが気軽に使える業態へ!」
「そのためには、水商売の悪しき習慣を撤廃すべし!」
以前もどこかで書きましたが、私たち創業メンバーの前職は、
「営業職2人、橋などの設計1人、配送関係1人...」
飲食経験のなかった私たちは、飲食業界の理想論をよく語っていました。
その中でもよく覚えているのが「ツケという仕組みの廃止」でした。
それまで法人向けの営業職で働いていた私としては、「書面に捺印もない口約束などは信用してはいけない、ツケなど論外」という考えでした。
これは、創業メンバー全員が一致していた考え。
これから飲食業を開業しようと考えている方の多くは、私たちと同じようにツケはやらない方向だと思います。ところがいざ開業して半年経った頃、私たちのお店は、意外なことでツケが発生することになりました。
なぜ、ツケを認めないと決めていた私たちが、ツケの流れに巻き込まれたのか?
開業をお考えの方たちの参考になれば嬉しいです。
捨てられなかった、嫌われる勇気
1号店を開業して半年くらい経った頃。
売上は相変わらずさっぱりで、ごく少数のリピーターの方に使ってもらっているという状態。
長い間お客さんが少ない時期が続くと、どんどん自信が失われていくものです。
創業前に語り合った飲食業界の理想論もほとんど忘れかけていました。
こうなってくると完全に負のスパイラル。
少ないリピーターの方の売上が日々の大半を締めることになり、経営的にはとても危険。
一部のリピーターの方を失っただけで、売上が大幅に下がることになる訳です。
「絶対に一人もリピーターの方を失ってはいけない。」
こんな状態になっていました。
そんな時に起きた、想定外の出来事。
お客さんの所持金が飲み代よりも少なかったのです。
今でこそ然るべき手順で対応していますが、当時の私たちのお店はクレジットカードも使えず、現金支払いのみ。コンビニでお金を下ろすサービスもまだ普及していませんでした。
「ここで厳しく回収しては、リピーターさんに嫌われる」
そんな思いもあって、"特別に"ツケを認めてしまったのです。
多くのお客さんを失ったが...
その後、この件の金額は回収しましたが、この一件以来、その後もツケで飲もうとするお客さんが増えていってしまいました。
「あの人がいいんだったら、俺もいいじゃん。」
「しょっちゅう来てるんだから、少しくらいいいだろ。」
と、こんな感じ。
創業当時は、あらゆる業者からの信頼がないため、毎日の仕入れは全て現金払い。
ツケが増えれば仕入れもできず、お店が運営できなくなってしまいます。
細かいことは端折りますが、結局2号店の出店を前に、全てのツケの精算と、今後一切のツケの廃止を徹底しました。2店舗目の出店に伴い、アルバイトの雇用もあったため、真っ当な現金商売に戻す必要があったのです。
結果、やはり多くのリピーターの方に嫌われ、売上は大幅に低下。
罵声を浴びせられることもありました。(←これはかなり傷つきました。)
最終的には、多くのリピーターの方を失うことになりましたが、この決定は今でも正しかったと思っています。
あのまま続けていても、現金の支払いが回らなくなって潰れていた可能性だってある訳です。
顧客を失うことを恐れて、お店を失ってしまっては本末転倒。
あえて、当時の反省を考えるなら、やはり
「常連さんだからといって、特別なツケを認めてしまったこと」
「支払い方法が現金のみだったこと」
でしょうか?
なぜカードが使えなかったかは、またどこかで書くとして、とにかく売上の低下を恐れて、一部の顧客に特別な対応をとってしまったのがそもそもの原因。
これに尽きると思います。
開業時は、売上が下がるのが怖くて、ついつい一部のお客さんだけ特別扱いしてしまいそうになることがあるかも知れません。
でも開業時こそ「早めの回収と遅めの支払い」にこだわるべきでしょう。
ツケは経営的に、「百害あって一利なし」。
やはり、ツケは絶対に止めておくことをオススメします。