ふりかえりコラム 開業後

「紹介」による集客を考える

集客で一番コストのかからない方法は何なのか?
それは当然、お客さんによる「紹介」と「口コミ」。

今でこそ、新規の集客にSNSを使えるようにはなりましたが、これは無料で使えるとは言え、情報発信を継続する上で自分の時間を投資していると考えればコストがかかっていると言えます。

一方、紹介や口コミは自分の時間すら投資することなく集客できるのだから、これほど費用対効果の高い集客はないと言えるでしょう。

だからこそ、私も過去に紹介による集客を増やすべく、大々的に「紹介キャンペーン」なるものをやってみた訳です。果たしてその結果はいかに?

紹介キャンペーンをやってみた2010年頃。写真は当時オープンしたばかりだった新店舗。

使われない紹介カード

今から10年くらい前に私がやってみた「紹介キャンペーン」。
これは、お店の会員になってくれたお客さんに紹介カードを渡して紹介による集客を増やそうと考えた結果、実施したキャンペーン。

紹介されたお客さんと紹介してくれたお客さん、双方にサービス券をつけて利用を促すという、今となっては良く目にするようになった試み。紹介による集客を考えるオーナーさんの中には、当時の私と同じようなアイデアを思い浮かべている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

そんな目論見でやってみた紹介キャンペーン。

やってみた結果はどうだったのか?
残念ながら、結果は失敗と言わざるを得ないものとなりました。

紹介カードを大々的に配ったにも関わらず紹介が増えることはなく、仮に紹介があったとしてもカードを持ってくるお客さんはほとんどいませんでした。

恥ずかしながら、当時の私はこのキャンペーンがなぜ機能しないのかよく分かっていませんでした。なぜなら紹介する人も得するし、紹介される人も得をする。その結果、お店も紹介が増えてみんな満足。誰も損しないはずなのに、なぜ使われなかったのか?

皆さんはこの理由、分かりますか?

得られるものと失われるもの

紹介が増えなかった理由は何だったのか?
これは直接お客さんに聞いたわけではないので、あくまで推測でしかありません。

ただ、いま私が感じていることは「紹介する」という行為には、目に見えない「信頼」の交換が大きく関わっているということ。つまり、友だちを紹介して多少の金銭的な得を手に入れたとしても、その友だちがお店に満足してくれなかったら、割引と引き換えに友だちを売った事になり、結果的に自分の信頼を失うことになる訳です。

自分が逆の立場になって考えれば、すぐに分かること。
お客さんは少額の金銭的な得のために、自分の信用を売ったりはしないのです。

私のお店はいま、紹介による集客を増やすために何の仕組みも用意していません。
多分、今後も一切やることはないでしょう。
なぜなら当時のキャンペーン失敗で、「紹介を増やすために必要なのは紹介を依頼する努力ではなく、紹介したくなるお店になる努力」だと学んだから。

紹介を増やすためにやるべきことは、何かと引き換えに紹介を増やそうとすることではなく、お客さんが純粋に「このお店は絶対に紹介しても安心できる」という時間の価値を毎回安定して提供し続けること。

この安心感なくしてお客さんが自分の大切な知人を紹介してくれるなんて事はなく、「紹介してください」と割引を付けてお願いするだけ紹介が増えるならどのお店だって繁盛できる、と今なら思うことができるのです。

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