2002年の2月。まだ新卒で就職した会社に勤めていた頃。
上司に退職願を出し、2002年5月の退職で受理されました。
退職も決まり、「バーを運営する会社を作る」と父に伝えた時、こう言われました。
「水商売をするような人間にするためにお前を育ててきたんじゃない!」
普段は放任主義の父でしたが、この時ばかりは珍しく激怒しました。
「いや、バーという業界をもっと多くの人に使ってもらえるようにするために起業するんだ。水商売なんて一括りに言ってほしくない。」と反論するも聞く耳持ってもらえず。
結局、父には理解されず、反対されたまま強引に1号店を開業しました。
1号店の実態は水商売そのもの
志高く開業した1号店でしたが、その実態は父が反対していた水商売そのものでした。
「店内でお客さまと一緒に飲む」
「お客さまにおごってもらう」
「営業後にお客さまと一緒に飲みに行く」
望んでそんな水商売スタイルをやっていた訳じゃありません。
お酒を飲むのは好きでしたが(笑)。
当時、飲食業のノウハウがなかった私たちが目先の現金を稼ぐには「人柄」でお客さまに来てもらうしか方法がなかったのです。
正確に覚えていませんが、こういう人柄営業で毎月の売上の4割くらいを稼いでいたような気がします。一度覚えてしまった人柄営業から抜け出すのは容易ではありませんでした。
結局、父に否定されていた水商売スタイルは3号店の出店時まで続きました。
「正社員の雇用」という転機
2005年5月、3号店を出店しました。
それまで創業メンバー4人とアルバイト数人だけでやってきましたが、当初の事業計画にあった通り、初めての正社員雇用をする事にしました。
ただ、ここで1つ問題が出てきました。
「この水商売スタイルを正社員にやらせるのか?」
という事です。
当然、「そりゃ、無理でしょ」となりました。
当時の私たちは17時から営業を始めて、閉店が朝の5時ごろ。
さらにそこからお客さまと飲みに行ったりして、帰宅するのはお昼ごろという生活。
「正社員にそんな事をお願いできない」という、もっともらしい理由もありましたが、本音で言えば私たちも「この生活を続けるのはもう無理」と感じていました。
正社員の雇用を機に、売上の多くを占める「水商売スタイル」をやめることを決めました。
売上減少をどうするのか
「水商売スタイルをやめよう」と決めるのは簡単でした。
でも、そんな事をしたら1、2号店で私たちを応援してくれたお客さまの信頼を失い、売上減少は避けられません。
かと言って、今までのスタイルを続けるなら正社員の雇用は諦めなくてはなりません。
そして、4人で話し合った結果、次の3つの取組みを実施しました。
① 1、2号店のお客さまに丁寧に説明し、理解をしていただく。
② 食事のメニューに団体さま向けメニューを追加する。
③ 宴会プランのフルリニューアル。
当時の水商売スタイルでは1〜2人での利用が多かったお店でしたが、新しく団体さまでも使っていただけるよう、全体的なラインナップに厚みをもたせたのです。
1、2号店のお客さまは予想していたよりも理解していただけるお客さまが多く、売上の減少は予想していたよりも軽微で済みました。
結果的には既存のお客さまに理解をしてもらい、さらに団体のお客さま利用も増えたため、この頃から一気に売上が伸び、出店を加速していくことになります。
創業以来続いていた、水商売スタイルから脱出した時期でした。
開業時は無理のない営業スタイルを
私たちの場合、1号店が駅から遠かったこともあり、長時間の営業、個人の営業力に頼った集客など、開業時にかなり無理な営業スタイルを取ってしまいました。
「創業時は苦労した方が良い」
そんな精神論が自分の中にあったのも事実。
でも、これから飲食店を開業する予定の方で、後々正社員を雇用する予定があるならば、創業者にしかできないような営業スタイルは早めに止めておいた方が良いと思います。
私たちは3号店を出店するタイミングで何とか営業スタイルを変えることができましたが、失敗したら一気に3店舗とも失う可能性だってあるわけです。
営業体制の変更は、後になればなるほど失敗のリスクも大きくなるため難しくなります。
駅近物件ならば、しっかりとした事業計画と実行力があれば、無理な営業スタイルを取らなくても採算は合わせられるでしょう。
くれぐれも私たちの開業時のような、精神論に頼った営業スタイルを取らないようにお気をつけください。
水商売スタイルから脱出するきっかけとなった3号店。
スタイル変更の甲斐あって、初めての正社員の採用も成功しました。
(2005年8月頃撮影)