開業前

「お金が欲しい」っていう開業理由はどうなの?

飲食店を開業する前に事業計画書を作る方は多いと思います。
いや、むしろないとまずいですね。(笑)

ノートに手書きでアイデアを書き出して、そのアイデアを少しづつ掘り下げていってみたり。そして、ある程度構想が固まってきたら、パソコンで清書を作ってみたり。
事業計画書の作成は、創業前の醍醐味の一つですね。

当然ですが、計画書に収支のシミュレーションは欠かせません。
そして、収支の計算以外にも

「飲食店を開業する上での店舗コンセプト」
「店舗の戦略商品や価格設定」
「開業をする目的」
などを盛り込むケースが多いのではないでしょうか?

人によって内容は様々だと思いますが、今日は上に挙げた3つのうちの1つ。
「開業する目的」について、当時の私たちのケースを書いてみたいと思います。

事業計画を考えている段階の方の参考になればと思います。

開業する2つの目的

このサイトの一番初めに公開した記事で書いていますが、私たちが飲食店を開業したのは、

「バーをもっと気軽に使ってもらいたい」

という目的があったからです。

これは創業から15年以上が経った今でも全く変わりません。
もう少し詳しく書くと、
「バーという空間で素敵な時間を過ごしていただき、前向きな気分になってお帰りいただくことで、お客さまの明日の活力になりたい。そんな人が増えれば日本がもっと元気な国になるんじゃないか?しかし、バーという業界は一般的には敷居が高い。だから自分たちでバー業界をもっと気軽に使える業界に変えていこう!」

と、考えたのです。
改めて自分で書いてみると、素敵な開業目的ですね。(笑)

ただ、それだけが開業した目的かと言うと、実はそうではありません。
開業準備をしていた当時は26歳。
とてもじゃありませんが、そんな崇高な目的のためだけに開業を決意するほど人格者じゃありません。開業するには他にも目的がありました。

そんなもう一つの開業目的、それがこちら。
開業10ヶ月前に書いた事業計画書の中の1ページ。
他の部分はかなり熱い夢が書かれていて、恥ずかしいのでぼかしてます。。

ズバリ、「お金をもっと稼ぎたかった」のです。

「お金が欲しい」は悪いことじゃない

雑誌などで実際に会社を興した方のインタビューなどを見てると、壮大な起業の目的が語られていたりします。
そういう成功談を読んでいると「お金が欲しい」なんていう理由で起業するのは、ちょっと後ろめたい気分になる方もいるかも知れません。

でも、「お金が欲しい」から起業するという理由は悪いことじゃないと思います。

マズローという学者さんが提唱したように、まず自分の欲求(安全欲求)が満たされなければ他人に貢献したい(自己実現欲求)なんて余裕を持つのは難しいからです。

マズローの欲求5段階説。
図はこちらのサイトより引用させていただきました。

起業には失敗のリスクがあります。
他人に貢献したい(自己実現欲求)というチャレンジをすると、自分の欲求(安全欲求)を失う可能性があります。
そのため、事業の成功と自身の生活の充実、この両方を望むのは自然なことだと思います。

まぁ、私たちの場合は素人が4人も集まって事業を始めちゃったので、安全欲求はおろか、しばらくは生理的欲求も満たせない生活が続きましたが。。

でも、お金が欲しい「だけ」じゃ失敗する

お金を稼ぎたいという理由で開業するのは悪いことじゃない。
でも、お金を稼ぎたいという理由だけで開業するのは、かなり危険だと思うのも事実。

自分で開業すると、会社員だった時よりも多くの苦労があります。
開業したばかりの頃は自分の仕事量と報酬が全く見合わない状況になる人も多いでしょう。
そんな時、お金がほしいという理由だけが開業の目的だとしたら、かなりの高確率で途中で挫折してしまうことになるでしょう。

以前、3年で90%が廃業するという記事を書きました。
3年で10人中9人が事業に失敗するという事です。

一見、マイナスに思えるこの数字ですが、見方を変えれば10人中、他の9人が諦めるまで粘り強く事業を続けることができれば、成功できる確率が高くなるという事です。
ただ、その粘り強さを発揮するには大きな原動力(モチベーション)が必要です。
その粘り強さの原動力になるのは、やはり「お金」という目的だけではない、もっと「社会貢献性の高い目的」なのではないかと思うのです。

私たちが開業して半年間は報酬がない生活が続きました。
そして、その後しばらくの期間もほとんど報酬がない状態で粘れたのは、やはり「バーをもっと気軽に使ってもらいたい」という強い思いがあったからだと思います。
この目的がなければ、多分3ヶ月くらいで挫折していたでしょう。

そう考えると、「お金をもっと稼ぎたい」という目的で開業するのは悪くないと思いますが、やはり事業というのは誰かの役に立ってはじめて成立するものと考えると、「お金」以外の部分、明確に他人に貢献できる目的が必要なんじゃないかな〜と思います。

以上、創業前の私たちの経験が参考になれば嬉しいです。

うちの会社の一番古い計画書の表紙。
中にはお金の話から、日々の細かい営業方針まで書かれています。

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