飲食店を開業した後の最大の悩みといえば、やはり集客。
いかにお客さまに認知してもらい、行ってみようと思ってもらえるかどうか、でしょう。
でも、その課題を何とかクリアした後に出てくる、もう一つの問題。それが、
「いかに居心地良く、時間を過ごしてもらえるか」
という事だと思います。
ローカル駅で開業する場合、お店の売上の大半は、「何度もお店を使っていただいているお客さま」、リピーターの方たちによるものです。
初めての集客に成功したとしても、居心地が良くなければ後がない、という訳です。
今日はそんな私たちの体験談です。
満を持して3号店を開業
2号店の出店から、1年半が経った2005年5月末。
1号店、2号店ともに何とか軌道に乗せることに成功し、3号店をオープン。
3号店のコンセプトは「ジャングル」。
新しいコンセプトと併行して、食事のメニューも一新。
お店で独自に仕込んだ自家製チャーシューや、お皿からはみ出るくらいに大きい魚料理など、手作りの味わいと豪快さにこだわったラインナップ。
2002年の10月に素人4人で始めた飲食業でしたが、この頃までには何が繁盛の秘訣なのかが何となく分かってきている気でいました。
そんな、ほんのちょっとの自信を持って臨んだ3号店の開業。
でも、やはり新しい落とし穴が私たちを待っていました。
ジャングルの遺跡をイメージした店内。
内装工事にもお金をかけて、万全のオープンとなるはずでした。
経験したことのない問題
1号店と2号店、共にオープン時につまづいた私たち。
3号店は同じ失敗をしないよう、入念に事前の準備をしました。
・オープン日を店前に掲示し、地域の方にアピール
・1〜2号店で勤務経験豊富なスタッフを配属
・一新された自信満々のフードラインナップ
創業から数々の失敗を繰り返してきた私たちですが、今回ばかりは抜かりなし。
「絶対に上手くいく!」と確信を持って準備を進めていきました。
そして、迎えたオープン初日。
いきなり想定外の問題が起こりました。
事前の告知効果もあり、開店早々に想像以上のご来店。
あっという間に満席状態となってしまったのです。
当時は1号店、2号店も軌道に乗っていましたが、いずれのお店もオープンしてから少しづつお客さまを増やしていった流れ。
オープン初日から満席になることなんてことは、想像していませんでした。
経験豊富なスタッフとは言っても、一新されたフードメニューを前にしては提供スピードは格段に落ちます。同時に満席状態でも続くご来店ラッシュ。
お店に入れないお客さまにお詫びをしながら、ドリンクとフードを調理して提供。
色んな席から「頼んだものが出てこない」と催促を受ける、完全なパンク状態。
せっかくご来店いただいたお客さまに満足な居心地を提供できませんでした。
集客の苦労ばかりをしてきた私たちにとって、経験したことのない問題が起きていました。
スピードとクオリティの両立
3号店のフードメニューを一新した理由の1つは「お客さまにご来店いただくため」。
1〜2号店同様、オープン当初は集客に苦労するだろうと予想して、かなり手の込んだフードメニューを用意していました。
2号店のオープン当初は、以前書いた通りフードラインナップを削りすぎて失敗。
そして3号店はフードラインナップを凝りすぎて失敗してしまったという訳です。
その後、2〜3ヶ月試行錯誤を繰り返してみたものの、商品提供のスピード改善は実現できず。
2号店のオープン時と同様、早々にメニューラインナップを変更する事態になりました。
当時の私たちには商品クオリティと提供スピードを両立するノウハウがなかったのです。
「美味しいけど提供に時間がかかるメニュー」は全て削除することになりました。
この時に初めて、これまでとは質の違う問題が起きていることに気づきました。
創業以来、集客ばかりに頭を悩ませてきた私たちに新しく出てきた課題。
「商品提供スピードと商品クオリティの両立」
お客さまが少ない時期には問題なかった、スピードとクオリティの両立。
それが、安定してお客さまにご来店いただける状態になり両立できなくなってしまいました。ある程度、空いている状態でしか回らないモデルだったのだと思います。
商品が出てくるのは早いが、美味しくない。
商品が出てくるのは遅いが、美味しい。
都心の高級レストランであれば、後者でも許されるかも知れません。
でも気軽に使える街場のレストランでは、この2つのどちらでも生き残ることはできません。
「混雑時でも、スピードとクオリティが安定した、ワンランク上のお店を目指す」
これが3店舗目以降に目指していく、大きなテーマとなりました。
開業時に美味しい料理を提供したい、と考える方は多いと思います。
でもせっかくの美味しい料理も、提供までに長い時間お待たせするような事があってはリピートは望めません。
これから開業を考えている方には是非、私たちと同じ失敗をしないよう、料理へのこだわりと提供スピードのバランスを考慮したメニュー構成を考えてもらえればと思います。