開業時の廃業危機を乗り越えて複数店舗の経営という段階へ移っていくと、企業は新しいステージへの挑戦券を手に入れられます。
それが、「ゆとりの出てきた資金をどこに投資すべきか?」という挑戦。
創業から6年目、2008年の頃でした。
ゆとりとは言っても、大手チェーンに比べれば、私たちの会社は吹けば飛ぶような企業規模。決して余裕はありませんでしたが、ある程度のチャレンジに投資するお金が出てきていたというのが実際のところでした。
そこで私たちが決めた投資先が「オリジナルヒット商品開発へ向けた大型投資」。
これまで見たことないワクワクするオリジナル商品を開発し、お客様たちにまだ体験したことのない価値を提供しようと考えたのです。
メーカーを巻き込んでの大型投資
過去に体験したことのない大型投資だったため、社内での企画進行は練りに練って慎重に進めました。
「販促戦略はどうやったら面白いか?」
「広告費にどれくらい使っても大丈夫か?」
「話題性は十分か?」
どうせやるなら、妥協せず徹底して商品開発をする!
という事で、社外のメーカーにも協力してもらってオリジナル商品を作ってもらいました。
正確に覚えていませんが、企画から実行まで約半年くらいかかったんじゃないかと思います。
オリジナル商品がロングランの人気商品に
商品開発に対しては初めての大型投資だったため、不安もありましたが、結果は大成功。
どの店舗でも人気の商品となり、お客さまたちがスマホ(当時はガラケー)で写真を撮りまくって大喜びしてくれました。
多くのお客さまが楽しんでくれているのが見れて、本当に嬉しかったです。
結果的にこの商品は人気が落ちることなく、4年以上続く人気商品になりました。
ただ、この商品は思わぬ形で急速に熱が冷めていくことになりました。
大手チェーン居酒屋が丸ごとパクった商品を出してきたのです。
商品名から広告物まで、全てがパクられる
きっかけはたまたま仕事後に入ったチェーンの居酒屋でした。
何となく見覚えのあるポスターがあると思ったら、自分が作ったはずのポスターが全く同じ構成でデカデカと張り出されていました。
丁寧にスタッフの吹き出しの言葉まで全く一緒でした(笑)。
「やられた!」
気づいた時は、時すでに遅し。
私たちが大金を投じて開発した商品を広告物から商品まで、そのチェーンのオリジナル商品としてゴッソリ盗まれてしまっていたのです。しかも、私たちがメーカーに協力して作ってもらった商品は、劣化版の安い作りのものに置き換えられてしまっていました。
さらにメニューをよく見てみると、他にも私たちのお店の独自メニューが全く同じ名前で何個も載っています。
恐らくチェーンの商品開発の人がたまたま私たちのお店を使ったのでしょう。
「はらわたが煮えくり返る」という感情をその時実感しました。
パクられるのは人気の証と考えて怒りを抑える
発見した当時は文字通り「はらわたが煮えくり返った」状態でしたが、数日かけて少しづつ冷静になっていきました。
「パクられたという事は人気の商品を開発できた証だ」
「誰も思いつかなかった商品を生み出した事実は変わらない」
「4年間、多くのお客さまに喜んでもらったという自信もある」
こう言っては何ですが、飲食業は露骨なパクリが横行している業界。
大手同士でも「よくこんな露骨な真似をするな」という案件もよく目にします。
恐らくネタ不足のチェーンにとって、私たちは格好の新商品の提供元だったのでしょう。
その後、他のチェーンからも似たような商品が出てきてしまい、結果的に私たちはこの商品の販売を止めることにしました。
正直、7〜8年経った今でもかなりムカついています(笑)。
でも、盗作されるのは新しいものを創造する会社の宿命と思うようにしています。
例えるのは恐縮ですが、iphoneのデザインなんて盗作されまくってますしね。
実は恥ずかしながら最近知った言葉ですが、本田技研工業の創業者として有名な本田宗一郎さんがこんな事を言っていたそうです。
「一度真似をすると、永久に真似をしていくのである。」
新しいものを創造する事が好きな人にとっては、何とも気持ちの良い言葉ですね。
はじめから真似をされる覚悟をしておいた方が良い
これから飲食店の開業を考えている方の中で、新しいものを生み出すことが得意な方がいるかも知れません。
私の場合、まだ10店舗くらいの規模の段階で真似をされるとは思っていなかったため、当時は冷静さを失ってしまいましたが、人気の商品を開発したら必ずどこかが真似をします。
それを知ったら怒りがこみ上げてくると思いますが、本田宗一郎さんの言葉にあるように、「人真似をする人は、ずっと人のものを真似していくだけ」なのでしょう。
新しいものを生み出す苦労に比べたら、人真似は遥かに楽です。
でも、「そんな風になりたいか?」と言われたら「そんな風になりたくない」と答えると思います。
「人真似しかできない敵は相手にしない。」
こんな風に考えて準備をしておくと、開業後の商品開発も心が楽になるかも知れません。
私たちの経験が、皆さんの参考になれば嬉しいです。