開業前

開業前、第一回ドリンクメニュー会議

前職を退職した2日後、2002年6月2日。
その後、1号店として開業することになる民家に創業メンバー4人で集まりました。

6月初旬にも関わらず、すでに夏のような暑さ。
エアコンがないため民家の窓を全開にして、こたつテーブルを囲んで会議開始。

わずか2日前までは空調完備は当然の事、高価な椅子とテーブルが揃ったオフィスで会議をしていたため、「これが起業するってことか...」と妙な感覚になったのを思い出します。

話が逸れましたが、当日の議題は「第一回ドリンクメニュー会議」
その名の通り、ドリンクメニューを決めましょう、という事です。
(まぁ、実際は1回しか開催されなかったので「第一回」とか付ける必要ないんですが(笑)。)

前職を退職する前に、すでに3〜4回ほど4人の時間を合わせてミーティングをしていたので、お店の運営方針やターゲットなどは決定済み。
後は、ドリンクラインナップの決定と内装工事をさくっと終わらせるだけのはずでした。

ドリンクラインナップは、何と6種類

さて、いよいよドリンクを決めていくこととなりました。
会議の段取りは細かく決めていなかったので、「とりあえず知ってるドリンクを順番に挙げていく」という流れに。

当日の流れはこんな感じでした。

代表「じゃ、決めるよ〜。まずは生ビール!」
辻本「酎ハイ」
T専務「梅酒」
Y専務「サワー」

〜2周目〜

代表「う〜ん...あっ、ジントニック!」
辻本「...あと何かあったっけ?あっ!ソフトドリンク」
T専務「...いったんパス。。」
Y専務「え〜、じゃ俺もパス。」

以上、第一回ドリンク会議終了

当たり前ですが、この時全員が「やばい」と感じました(笑)。
「誰かがドリンクを決めてくれる」と全員が思っていたのです。

ドリンクラインナップが6品のバーなんて聞いたことがありません。
これしか知識がないのに飲食の開業を目指す人間もなかなかいないでしょう。
急いで対策を考えることになりました。

にわか飲食経験者を目指して

明らかな知識不足が露呈した6月2日。
そして、1号店のオープン予定日は10月中旬。

「あと3ヶ月くらいある。とりあえず経験を積もう。」という結論になりました。
今でも思いますが、よくこんなレベルで前職を退職したものだ、と自分に感心します。

そして、それぞれが担当するポジションの経験が積める場所に行くことに決定。

代表は総合的に飲食に関われる大手チェーン居酒屋アルバイト。
T専務はドリンク経験を積むべくバーテンダー学校。
Y専務は調理がじっくり学べる個人経営の小料理居酒屋アルバイト。
私はクオリティの高い接客を学ぶべく麻布のバーでアルバイト。

私の場合、人材会社出身の強みを活かして、自己PRガンガンの履歴書を書いて、翌日面接。会議から2日後の6月4日の夕方にはバーで働いてました(笑)。

そして、4人とも計画通りの場所が無事に決まり、3ヶ月限定の「にわか飲食経験者」を目指した特訓をスタートさせたのです。

グレーゾーンを潰さなかったミス

3ヶ月後、無事それぞれが経験を積むことができました。にわかですが。。
勉強した甲斐もあり、オープン時にはドリンクラインナップも200種類まで増えました。

メニュー会議の時は焦りましたが、思考停止にさえならなければ何とかなっちゃうものです。

振り返ってみると、開業時、事業計画書の作成担当は私でした。
正確な記憶ではありませんが、計画書を作成している段階で、ドリンクラインナップの担当がグレーゾーンになっている事は、何となく気がついていたような気がします。
でも、当時の私は営業職出身だったこともあり、細かいラインナップなどを考えるよりも、集客方法やセールス強化方法ばかりを考えていました。
その方が楽しかったのです。

飲食業を始めるにあたって、「事業計画」と「商品ラインナップ」は飲食店を軌道に乗せるための両輪と言ってもいいと思います。
それを私は片輪の事業計画だけをせっせと作って、もう片輪の商品ラインナップについては、何とかなるだろうと楽観視してしまったのです。

企業に所属していると、苦手な分野を誰かがフォローしてくれることが良くあります。
そうやって企業は得意分野を伸ばせるようにチームを作ってくれたりするからです。
ひょっとしたら当時の私は、まだ企業に所属している体質から抜け出せず、誰かがフォローしてくれるだろうと勝手に淡い期待を抱いていたのかも知れません。

起業したら苦手な分野があっても、誰もサポートはしてくれません。
グレーゾーンは自分が処理しない限り、自分に返ってくるわけです。

飲食店の開業を考える方で、商品ラインナップを疎かにする人は私くらいだと思います。
でも、飲食店の開業を考える方で、私とは反対に事業計画を疎かにしてしまう方はいるかも知れません。

そんな方には是非、私がしてしまったような苦手分野を疎かにするような事はせず、事業計画と商品ラインナップの両輪をしっかりと作り込んでもらえればと思います。

そうすれば私たちのような、開業前後の大きな苦労をしなくて済むと思いますよ(笑)。

会議の時は6品だったドリンク。
オープン時には何とか200種類まで増やせました。とりあえず、めでたし。

-開業前

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